| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
シンポジウム ME02-1 (Presentation in Symposium)
ミジンコは主に淡水に生息する動物プランクトンであり、一次生産者である植物プランクトンを食べ、魚や水生昆虫などの高次消費者に食べられることから、湖沼生態系の維持に極めて重要な役割を果たすキーストーン種として知られている。またミジンコは、周囲を取り巻く環境の変化に適応するために、環境に応じて表現型を様々に切り替える能力も有していることから、生物の環境応答研究のモデルとしても注目されている。中でも環境に応じて雌雄を産み分け、単為生殖と有性生殖を使い分ける環境依存型性決定は最もダイナミックな環境応答の例である。このような生物の巧みな環境応答は種の繁栄に大きく貢献するものであるが、一方で人間の活動などによる想定外の環境情報によって深刻なかく乱を受けている場合も知られている。ミジンコにおいては、殺虫剤の成分として使われている幼若ホルモンに曝されることで、環境非依存的に雄の産生が誘導される。これは個体群の壊滅に繋がる恐れがある深刻な内分泌かく乱の事例である。本講演では湖沼生態系を支えるミジンコが見せる環境依存型性決定を始めとする巧みな環境応答とそれを制御する分子機構について、現在までにわかっていることを概説するとともに、講演者のこれまでの研究で明らかになってきたその内分泌かく乱の分子機構について紹介する。また、このような内分泌かく乱問題の解決に向けて現在取り組んでいるミジンコの生物学的特徴や遺伝子を活用した新規の環境試験法の開発についても紹介したい。