本研究では、２０１６年から３年間にわたって、環境DNA手法による陸水生態系の生物種構成と遺伝的多様性の解析手法の確立を行なった。つまり、環境 DNAを用いて、湖沼、河川、汽水域などの陸水生態系における生 物の種組成を推定するとともに、外来種や希少種を早期発見するメタバーコーディングの手法を確立 することを目指した。さらに、環境 DNA から遺伝的多様性を推定し、有効集団サイズを含 む集団遺伝学的解析を可能にする。それにより、 の種特異的検出法を確立した。湖沼、河川、汽水域などの陸水域生態系に生息 する魚類、昆虫、水草といった多様な生物種の 分布や動態を、1リットルの水を汲むだけで把握す る革新的技術を開発する。この環境 DNA 技術 により、外来種・希少種を含めた生物群集の簡 便かつ迅速な生物分布モニタリングが可能となった。
　本講演では、これらの独)環境再生保全機構 環境研究総合推進費4-1602のプロジェクトとして行われた一 連の研究について解説する。陸水域生態系に生息する生物 群集のモニタリングと、さらには、その集団遺伝学的解析を目指して取り組んでいる研究を紹介する。そこから、環境DNAを用いた生物群集解析、遺伝的多様性解析の今後について議論したい。