| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


シンポジウム ME03-3  (Presentation in Symposium)

多地点・高頻度環境DNA観測に基づく魚類多様性モニタリングでわかったこと
What we learned from biweekly biodiversity monitoring based on fish eDNA metabarcoding from multiple sites

*宮正樹(千葉中央博)
*Masaki Miya(Nat. Mus. Chiba)

 環境DNAを対象にした魚類メタバーコーディング法(魚類環境DNA多種同時並列分析法;以下MiFish法と呼ぶ)は,調査法の機動性と迅速性に加えて魚類環境DNAを網羅的に検出できる簡便性の高い手法として注目を集めている。MiFish法のこれらの特性を生かし,2017年8月から房総半島南部の沿岸域で多地点の隔週調査を行ってきた。今回の発表ではその予備的解析結果に基づき,大規模データからいったい何がわかるのか,データ駆動型・仮説発見型アプローチの観点から探る。
【方法】房総半島南部の太平洋岸から東京湾の湾口近くまでの岩礁海岸に計11の定点を設けた。2017年8月末から2018年11月まで計32回の隔週サンプリングを行い,各定点でバケツ採水と現場ろ過を行った。ろ過済みフィルターから環境DNAを抽出し,ライブラリの調整とMiSeqによる超並列シークエンスを行った。
【結果と議論】約1年分に相当する26回のデータを解析したところ36,262,074本のリードが得られた。これらのリードの一次処理とOTUの割り当てを行ったところ117科373属に含まれる570種が検出された。調査期間中の調査地全体の種数は8〜9月に最大になり約200種に達し,2月に最低となりほぼ100種となった。この570種×11地点×26回分の大規模な在不在データから群集の非類似度を求め,非計量多次元尺度法に基づく解析を行ったところ,太平洋岸の定点と東京湾口に近い定点で魚類群集が大きく異なる明瞭な地理的構造が認められることがわかった。さらに,それらの魚類群集が周期的に変動する様子を明瞭に捉えることができた。
 以上の結果は,沿岸魚類群集のモニタリングに多地点・高頻度の環境DNA観測が有効であることを示しており,その時空間構造に規則性が見られることは魚類群集動態の将来予測にもつながるものと考える。


日本生態学会