| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


シンポジウム S04-1  (Presentation in Symposium)

ユネスコエコパークと他の関連制度との連携を通じた環境共生型地域の持続可能な発展
Sustainable development of environment-friendly areas through collaboration between biosphere reserve and other related systems

*酒井暁子, 松田裕之, 若松伸彦(横浜国立大学)
*Akiko Sakai, Hiroyuki Matsuda, Nobuhiko Wakamatsu(Yokohama National University)

 生物圏保存地域(Biosphere Reserve;ユネスコエコパークは日本の公式通称名;以下BR)は1976年に登録が始まり、現在は122カ国・686地域が認定されている。

 BRは自然と共生する持続可能な社会を世界で実現するためのモデル地域である。そのため、自然保護に加え、自然環境保全型の産業の振興や環境教育などを通じた地域社会の発展に取組み、住民らが地域の自然を自らの社会・文化的資本として守る意識を育むこと、また地域や世界的課題を解決するための学術研究に資する場として期待されている。こうした理念が具現化し国内外から多くの視察が訪れるなど、実際にモデルとして機能している登録地が存在する。

 一方でBRの枠組みを十分に活用できずにいる登録地もある。また新規申請、登録のペースは遅い。これらはBR制度が地域にとって必ずしも魅力的ではないことを示唆する。課題を整理すると、制度の歴史的経緯による部分と現状の運用に係る要因がある。後者の解決に向けて何点か具体策が考えられ、その一つとして関連する他の制度との連携の強化を提案する。関連他制度として念頭に置くのは、世界遺産のほか同様に公的な取組に対する国際的認定制度である、世界・日本農業遺産、世界・日本ジオパーク等、さらにユネスコ未来遺産運動など市民ベースの取組を認定する制度である。これらと協力することは、共通する目標である持続可能な世界の実現に向けて双方に有益であろう。

 以上を踏まえ、本講演では以下の項目を述べる:1)BR制度の概要と現況;2)持続可能に発展する「環境共生型地域」のモデルとしてのBRの実例;3)BRの課題;4)関連する制度の紹介、連携の提案。


日本生態学会