| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


シンポジウム S04-2  (Presentation in Symposium)

環白神世界遺産のユネスコエコパークの可能性
Possibility of Circum Shirakami Biosphere Reserve around Shirakami-sanchi World Natural Heritage Area

*吉田正人, 外崎杏由子(筑波大学)
*Masahito Yoshida, Ayuko Tonosaki(University of Tsukuba)

 白神山地は、1993年にブナ原生林の生態系が顕著で普遍的価値を持つとして、世界遺産リストに記載された。だが、1985年に国際森林年を記念して開催されたブナ・シンポジウムでは、ブナ原生林の価値と同時にブナ帯文化を育んだ生態系であることが重視されていた。また、1986年に日本自然保護協会が、白神山地を貫く青秋林道計画の中止を求める要望書を環境庁、林野庁に提出した際には、白神山地をユネスコの生物圏保存地域とすることを求めていた。世界遺産は生物圏保存地域とは異なり、世界遺産条約という法的拘束力のある制度であるため、林道計画を永久に封じ込める役割を果たしたが、一方で白神山地の価値のうち、ブナ原生林としての生態系の価値のみが強調され、ブナ帯文化を育んだ山であるという価値が忘れられ、世界最大のブナ林という誤ったイメージがマスコミによって拡散された。白神山地周辺にすむ人々にとっても、白神山地は遠い存在となり、世界遺産地域とコミュニティとの分断、自然的価値と文化的価値の分断が課題となっている。白神山地の持つ、ブナ原生林としての価値とブナ帯文化を育んだ山としての価値を統合するため、世界遺産地域をコアとした環白神生物圏保存地域の指定を提案する。


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