| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
シンポジウム S04-5 (Presentation in Symposium)
屋久島は1980年に生物圏保存地域(現在の日本での通称:ユネスコエコパーク、略称BR)に登録され、1996年に世界自然遺産に登録され、2016年に屋久島・口永良部島BRとして海域を含めて拡張登録された。世界遺産との二重登録地と海域を含む2点で、日本で唯一のBRである。その過程で霧島屋久国立公園から屋久島国立公園として独立した。BRの核心地域(陸域)、世界遺産地域、国立公園等の保護地域、森林生態系保護地域の保存地域はおおむね一致している。
世界遺産は環境省と林野庁が科学委員会を組織している。鹿児島県は特定鳥獣管理計画(ヤクシカ)を制定し、世界遺産科学委員会作業部会(WG)と合同で検討委員会を開催している。ヤクシカ管理においては、世界遺産地域だけでなく、屋久島全島を対象としている。BR核心地域である西部林道周辺はシカの高密度地域だが、個体数調整を行うか否かで議論が続いている。高標高域もシカが分布し、花之江河の自然植生への食害も、気候変動と併せて懸念されているが、銃による狩猟や個体数調整は麓のみで行われている。
屋久島・口永良部島BRは移行地域も含めて両島全域を含み、共同漁業権海域全域も含む。BR協議会は地域主導であり、世界遺産と異なり屋久島町が主体となり、市民も多数参加できる。しかし、BRとしての活動実態は世界遺産地域ではない口永良部島が中心である。
屋久島の特徴は県と町が担う屋久島環境文化センターと環境文化村構想、屋久島憲章、そして屋久島学ソサエティなどである。環境文化村構想は移行地域を含むBRの理念をもともと含んでいたとも言える。