| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
シンポジウム S09-7 (Presentation in Symposium)
地域の経済や社会を支える基盤としての「自然環境」の重要性が認識されつつある一方で、人材の不足や財政面の課題によって、自然環境の保全・活用が急速には進まないという現状がある。また、自然環境や生物多様性の保全を進めようとした際に、経済発展や生活の利便性等とのトレードオフが生じることが多く、取組が進まない場合も多い。このような課題に対して、自然環境の多面的な機能を活用することで、自然環境の保全と経済・社会への貢献を同時に進めようとする「グリーンインフラ」や、生物多様性の保全を含む社会的課題を並列に扱い、横断的に解決を図ろうとする「SDGs」の考え方を取り入れることは非常に有効であると考えられる。
一方で、環境・経済・社会を横断的に扱うためには、個別の課題に対して、個別の施策を検討するだけでは難しく、複合的かつ包括的に地域の課題を把握することが求められる。これまでは、行政が認識している課題に対して、コンサルタントが研究者等のアドバイスを受けながら、課題解決策を検討するというプロセスで計画策定や事業の検討が進む場合が多かったが、現況認識や課題整理の段階から多様なステークホルダーが関与し、ともに課題解決の方向性を探ることが必要であるといえる。
千葉県印旛沼流域では、気候変動に対する適応策の推進や流域でのエコロジカル・ネットワークの形成など、自然環境の保全だけに留まらない目標に対して、課題を把握する段階から研究者、コンサルタント、行政担当者、市民など多様な主体が参画する場づくりが試みられている。本講演では、印旛沼流域での事例の紹介を通じて、自然環境の保全や活用を含む幅広い地域の課題解決に向けて、多様な主体が連携して取り組むことの重要性についての提案を行いたい。