| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
シンポジウム S09-9 (Presentation in Symposium)
研究者としては、世の中に役立つ研究を実施し、その成果を社会に実装したいという希望があり、特に、生態学の分野で多く見られる。一方、実務者としては、直面している問題を早急に改善することに迫られ、多くの場合、十分な科学的根拠の蓄積や、研究者による研究開発を待っている時間がない。同じ自然科学の分野でも、研究者には「事実や真理の解明」が求められる一方で、実務者には「継続的な最適解の導出」が求められることから、これらの役割の違いなどにより、お互いの主張がかみ合わず、社会に役立つという点で相加的、または、相乗的な効果を生み出せていないことが多い。
研究者と実務者がお互いの立場を理解し、情報の共有と連携の場を設けていくことが、これらの課題を解決するための糸口の一つである。情報を共有していく上で不可欠であることが、社会のニーズの把握とシーズの創出という視点である。研究成果を速やかに社会に実装させることができるのは、「社会ニーズへの対応」型の研究であり、「必要性」の把握とともに、「実現可能性」の検討が不可欠である。残念ながらこれが満たされないことには、実現が困難であることが多い。一方、長期的な視点に立つと、今は必要性に駆られていないものの、いずれ社会で必要なことを前もって検知し、それを開発、説明し続けることも重要である。
これらの研究者と実務者の連携に関する課題は、全国的に問題が深刻化している野生動物管理の分野も例外ではない。本講演では、野生動物管理の分野を例に、研究者と実務者の役割を整理するとともに、両者の連携方法について検討したい。