| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


シンポジウム S10-2  (Presentation in Symposium)

東南アジアの植物多様性評価
Plant diversity assessment in Southeast Asia

*田金秀一郎(鹿児島大学), 満行知花(高知大学), 陶山佳久(東北大学), 矢原徹一(九州大学)
*Shuichiro Tagane(Kagoshima University), Chika Mitsuyuki(Kochi University), Yoshihisa Suyama(Tohoku University), Tetsukazu Yahara(Kyushu University)

 東南アジア熱帯林は世界規模で植物の多様性が高く、固有種が集中している生物多様性ホットスポットとして知られているが、近年の森林伐採、天然ゴムやオイルパーム等への農地転換などに伴い、急速に生物多様性が消失・劣化している。植物種多様性の保全のためには、分類学的研究に基づき、多様性を正しく理解し、各種の個体数や種生態といった情報を把握することが必要不可欠である。しかしながら、東南アジア地域においては植物の種多様性に関する信頼できる定量的な情報は乏しい。
 我々は環境総合推進費S9「アジア規模での生物多様性観測・評価・予測に関する総合的研究」における東南アジアの植物多様性調査の一環として、2011年からインドネシア、マレーシア、ブルネイダルサラーム、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、台湾、沖縄の標高24~3,031mの様々なタイプの森林、計153地点にて100×5mのベルトトランセクト調査を実施し、出現した維管束植物の全種を記録し、生態写真、DNA解析用試料とともに証拠標本を収集してきた。調査を通じて得た標本は4万点を超え、インドシナ半島においては、ほとんどの分類群でこれまでに記載された6~7割の植物種を得るこができた。
 今回の発表では、これらのフィールド調査、およびMIG-seqによる系統解析を用いて明らかとなった、東南アジア熱帯林の植物多様性パターンと、様々な植物分類群における新種率について紹介し、東南アジアの生物多様性・生態系機能観測の課題とネットワーク研究の必要性と展望を議論したい。


日本生態学会