| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
シンポジウム S10-6 (Presentation in Symposium)
コーラルトライアングルエリアを中心とした東南アジアから東アジア・オセアニアにかけての海域は、全海洋中で最も生物多様性が高い海域である。しかし、この沿岸域は人口も多く、人間活動に伴う海洋生態系への負荷が高いところでもあり、サンゴ礁、マングローブ、海草藻場などの重要な沿岸生態系が衰退の一途をたどっている。当海域の海洋生物多様性の知見は、2010年まで実施されたCensus of Marine Lifeなどの国際大型プロジェクトや、その成果であるOBISなどの海洋生物多様性グローバルデータベースの構築により集積しつつあるが、2010年以降の組織的な国際共同研究は限られている。AP-BONの中でも海洋研究者の活動はあまり活発ではなかった。
しかし、国際共同研究の機運が再び高まりつつある。アメリカ合衆国では、MBON (Marine Biodiversity Observation Network)が組織化され、Marine GEOやPole-to-Pole MBONなどの組織により、主にアメリカ大陸沿岸域から沖合を対象とした統合的な観測や研究が進みつつある。これに対応して、アジアやオセアニアの海洋研究グループはAP-BONの中でAP-MBONを組織化し、太平洋西部海域からインド洋を対象としたネットワーク観測・研究を実施すべく準備を進めている。AP-MBONの研究の柱は、(1) グローバルデータベースの整備とそれを用いた海洋生物多様性の広域変動解析、(2) eDNAやUAV(ドローンなどの無人航空機)/ROV(遠隔操作型無人潜水機)などの新技術を用いた海洋生物多様性の革新的な観測の実施、(3)生物多様性保全と生態系サービスの持続的な利用の両立のための沿岸管理オプション提言をめざす超学際的な取り組みである。本講演ではそれらに関するこれまでの取り組みおよび今後の計画を紹介したい。