| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


シンポジウム S11-3  (Presentation in Symposium)

博物館収蔵標本によって明らかになる、地域生物相の撹乱と変遷
The disturbance and change of regional biota inferred from museum collections

*松本吏樹郎(大阪市立自然史博物館)
*Rikio Matsumoto(Osaka Mus Nat Hist)

 博物館は標本を収集し、保管する。同時にそれに基づいて研究を行い、展示をつくり、普及活動を行う。コレクションは博物館活動の根幹であり、地域の自然の特性、変遷を知る上で重要な基盤であると言える。演者の所属する大阪市立自然史博物館は大阪を中心とした地域の自然に関して、これらの活動を行っている地域博物館であるが、大阪という流通の拠点に立地しているため、外来生物に接する機会も多い。外来種と疑われる生物が見つかった場合、候補の種および比較のための近縁種の標本は正確な同定に欠かせない。近年大阪で見つかったいくつかの外来昆虫に関して、コレクションとの関連性のもとで、発見の経緯を紹介する。またコレクション構築への市民の参画が外来種の検出につながっている点も紹介する。当館のコレクションは学芸員を中心としつつ、市民協力のもとで形成されて来た経緯を持つ。その過程で博物館をベースに活動を行う、特定の分類群に特化したループがいくつか生じ、分類学をはじめとする自然史研究への貢献とともに、質の高いコレクションの構築にも大きな役割を果たしてきた。これまでに見つかった外来種の発見の多くが、これら博物館周辺で活動する方々の手によるものであることから、その活動が、身近な自然をよく知ることを促し、その変化を見逃さない目を養ってきたことが分かる。同様の効果を狙い、より広く市民を対象に行なったアカハネオンブバッタの分布調査についても触れる。外来種問題において、怪しいものをきちんとそう認識し、正体を明らかにする仕組み、そしてその挙動をモニターすることはとても重要である。博物館のコレクションはその中核として極めて重要である。


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