| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
シンポジウム S14-1 (Presentation in Symposium)
統率の取れた鳥や魚の移動、鳥類のレックや蚊柱といった集団繁殖、アリやハチの家族など、動物が作り出す群れは多様で、複雑である。群れはさまざまな個体間相互作用を介して形成され、そのサイズや構造には種ごと、集団ごとに特徴がある。しかし、多数の個体の行動から生み出され、時空間的に変動しうる群れを定量的に評価することは容易ではない。そのような複雑な社会構造の可視化や定量的な評価に、ネットワーク解析は有効な手法である。ネットワーク解析では、どのような群れ構造を持つかという集団レベルでの特性とネットワーク上の個体の位置という個体レベルでの特性、この双方を解析することができる。近年、行動追跡手法の発展で、これまでにない高い解像度での定量データの取得が可能となり、さまざまな動物の社会構造が明らかとなった。その社会構造から群れ自体の検出や、病気の伝播に関する群れ構造の評価が行われた。さらに、各個体のネットワーク上での特徴量と生存率や交尾成功率、生理状態との関連から、社会構造が個体の適応度へどのように影響するかが調べられてきた。講演では、行動追跡手法で得られたネットワークを解析した先行研究とともに、発表者らが行っている、1)アリの時系列情報を含むネットワークの解析、2)個体-仕事という二部ネットワークから仕事の専門化の評価、についての研究概要を紹介する。ネットワーク科学と動物行動学との統合における現状から、行動生態学者がどのようにネットワーク解析を活用するべきか、議論したい。