| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
シンポジウム S14-6 (Presentation in Symposium)
生態学が扱う現象は、個体間相互作用に支えられる動物社会から種間相互作用によって駆動される生態系まで、多くの要素が相互作用する複雑系である。このような複雑系の大規模データを得ることが可能になってきたものの、解析し、解釈することは容易ではない。しかし近年、複雑系を要素とその間の関係性として簡潔に扱う分野であるネットワーク科学が、数理生物学や統計物理学、社会科学の分野横断的な領域として発展したため、生態学における大規模データの解析が可能になりつつあり、ネットワーク科学の手法を用いた生態学の研究が増加している。本講演では、ネットワーク科学の基本的な考え方と解析手法を紹介し、生態学にどのような知見をもたらしてきたかを概観する。さらに、ごく最近発展した時間を考慮したネットワークや、複数種類の相互作用からなるネットワークを解析する最先端の手法についても紹介したい。一方で、生態学での知見や考え方(例えば種間相互作用、多様性、安定性など)は、生態学者が対象にするような狭義の生態学的現象だけでなく、ネットワーク科学が扱ってきた人社会の現象にも適用できると考えられる。そこで私がGoogleトレンドの時系列データから、検索ワードをミーム(情報単位)とみなすことで、情報の生態系ネットワークを解析した話も紹介し、最後にネットワーク科学と生態学のコラボレーションについて議論したい。