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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-168

トキの採餌環境創出を目的とした水田生態系の実験的評価 II. 安定同位体比分析を用いた食物網構造の解明

*武山智博,大石麻美,関島恒夫(新潟大・院・自然科学)


野生生物の人為的再導入や野生復帰には、生態学的な評価をふまえた生息環境の持続的な整備が不可欠である。トキ(Nipponia nippon)は日本国内では野生絶滅種であるが、佐渡島では中国産トキの飼育下での増殖とそれらの野生復帰と定着を目指しており、2008年9月には環境省による野外への試験放鳥が行われた。佐渡島におけるトキの生息環境のうち、主要な採餌場所となる湿性環境の多くが水田であることから、採餌環境の整備にあたっては、水田生態系を構成する水生生物群集の生態学的評価が重要な課題である。小佐渡東部の水田を対象にした先行研究から、水田の水生生物は種数および個体数とも年間を通じ、「江(え)」と呼ばれる水田内の土水路で多く、これは江が年間を通じて湛水された状態にあることに起因すると考えられた。

本研究では、年間を通じたトキの採餌環境の創出と維持に有効だと考えられる「湛水」の水田の水生生物群集に与える効果を、景観要因として「立地環境」(森林からの距離として2区分した里山と平場)の違いも考慮に入れ評価した。2007年3月に小佐渡東部の複数の水田において、稲作水田では「江」を、休耕田では「通年湛水」をそれぞれ実験的な湛水処理区として創出した。2008年より農事暦にあわせ、4月(田植え前)・7月(田植え後)・9月(稲刈り直前)・12月(稲刈り後)にサンプリングを行った。そのうち、生物量が最も多い2008年7月における立地環境ごとの水田・江・湛水休耕田それぞれの水田生態系の構造を、炭素および窒素の安定同位体比分析を用いた食物網解析によって検討する。また、湛水方法や水田の立地環境の違いが、水田生態系の食物網構造と生物群集の多様性に与える影響についても考察する。


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