ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-183
*宮久史(北大・農),吉田俊也(北大・北方生物圏FSC),野口麻穂子(森林総研・四国),米康充(島根大・農),小熊宏之(国環研),坂井励(北大・北方生物圏FSC),高橋廣行(北大・北方生物圏FSC),小宮圭示(北大・北方生物圏FSC),小野貴司(北大・農),中村太士
林冠ギャップは、林内の光・土壌環境や草本類との競争関係など、稚幼樹の新規加入を左右する諸要因に、とりわけ大きな影響を与えている。択伐施業下において、森林の構造を維持するためには、稚幼樹の新規定着が不可欠である。しかし、択伐が稚幼樹の定着に与える影響を、多様な樹種を対象に、長期間にわたって広範囲で研究した例は乏しい。そこで、本研究では、北海道北部の天然生針広混交林において1967年より調査が開始された、面積110haに及ぶ択伐試験林(一部未伐採の対照区を含む)の毎木データと、空中写真から得られた林冠の状況を重ね合わせることにより、林冠ギャップと稚幼樹の定着との関係を明らかにすることを目的とした。
航空レーザ測量で得られた樹冠上面標高(DSM)、地盤標高(DTM)データ、および過去の空中写真を空中三角測量して得られたDSMデータから、2m×2mの解像度で林冠高 (DCHM)を求めた。この値が12.5m以下の箇所を林冠ギャップと定義した。2004年時点で、試験地内の未伐採林におけるギャップ率は32%であった。一方、10年ごとに単木択伐(胸高断面積合計で7-26%)が繰り返されてきた林分でのギャップ率は35%であった。これらの択伐林分においては、林分全体の蓄積はある程度維持されてきたが、稚樹の新規加入が少なく個体数が減少していることが報告されている。本研究では、稚樹の定着を林冠の状況と空間的に対応づけることで、北海道北部の針広混交林において、森林の構造を維持がしうる伐採方法に対する提言を行なう。