ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-184
*宮坂隆文,大黒俊哉,宮森映理子(東大・農),趙学勇,趙哈林(中国科学院沙漠研究所),武内和彦(東大・農)
砂漠化に伴い形成される砂丘景観において,砂丘間低地は砂地植物と非砂地植物が混在する多様性のホットスポットとなっている.砂漠化地域において植生の回復は喫緊の課題であり,砂丘間低地は回復のソースとしても機能していると考えられるが,その役割は明らかになっていない.本研究では,中国内蒙古において,主要な砂丘固定技術の短・長期的適用による植生回復効果を明らかにするとともに,砂丘間低地が果たす役割を検証した.
異なる期間(5・25・35年)異なる対策技術(禁牧,潅木・高木植栽)を適用した回復サイト,および対照区である流動砂丘地(各対策地の初期状態)と固定砂丘地(放牧地として維持されている草地)において,地形傾度(砂丘間低地・砂丘下部・砂丘中部・砂丘上部)に沿った植生調査を行った.植生回復の遷移系列を抽出するためDCAを行った結果,流動砂丘地を起点として全てのサイトが適用年数に沿って一軸上に序列化された.遷移系列に沿った種組成の変化(DCA一軸スコア)を応答変数,サイトと地形傾度を説明変数とした回帰樹木による解析の結果,4段階の回復ステージが見出され,高木植栽による効果が比較的高いことが示された.また交互作用が検出され,回復の初期と後期で地形による植生の違いが見られなかった一方,それらの中間期においては砂丘間低地でより回復が進んでいる状態が確認された.この結果は,砂地植物がまばらに被覆する初期から地形全体で植生構造が安定する後期までの遷移系列において,砂丘間低地を中心とした植物の定着・分散により回復が進行することを反映していると考えられた.
以上より,対策技術の違いによって植生回復効果は異なるものの,技術によらず砂丘間低地が回復のソースとなっていることが明らかになった.