ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-187
鳥取大学 院 農
増井太樹(鳥取大・院・農), 佐野淳之(鳥取大・農・FSC)
岡山県蒜山地域では火入れによって草原が維持されている。火入れという人為的攪乱による管理は草原に依存する多くの動植物に生存の場を与えてきた。しかし農業形態や生活様式の変化により草原の必要性が低下したため、その面積は急速に減少して多くの草原性植物が絶滅の危機にさらされている。この人間活動の縮小による危機は、第三次生物多様性国家戦略において第2の危機(underuse)として取り上げられており、このような土地の効果的な植生管理方法が求められている。本研究の調査地ではオキナグサやキキョウなどの絶滅危惧種が確認されているが、それらの保全活動はなされていない。そこで本研究では、希少種の分布と微地形との関係を把握することで絶滅危惧種の分布要因を明らかにし、効果的な保全・管理の方法を検討することを目的とした。
本研究では蒜山地域の火入れ地において全域踏査を行い、GPSを用いて希少種の位置を特定した。また地形による植生や環境の違いを明らかにするために、南・北斜面の尾根と谷の上部から下部にかけて1 m×1 mのプロットを128個設置し、光や土壌水分などの環境調査(6〜10月)と植生調査(6月、10月)を行った。その結果、キキョウやマツムシソウなどは尾根部や斜面上部に偏って分布しており、地形がこれらの植物の分布に影響を与えていることが考えられた。種組成と優占度を用いたTWINSPANによる解析の結果、群落はいくつかのタイプに分けることができた。6月の調査では南北斜面は違うタイプに分類されたが、10月の調査では南北斜面の違いは顕著ではなかった。このことから地形が植生に及ぼす影響は季節によって異なると考えられた。以上の結果と環境データおよび地形解析から、それぞれの希少種にとって影響を与えている要因を明らかにし、植生の分布を規定している立地条件について検討した。