ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-188
*宮崎祐子(奈良県森技セ),三橋弘宗(兵庫県立人と自然の博物館),大澤剛士(神戸大・院)
近年、管理を放棄した竹林が隣接地に拡大し、景観や生態系を乱す現象が問題になっている。各自治体では竹林の整備事業を進めているが、広域的な管理計画が存在することは少なく、整備現場は人手不足であるため、効率的な整備が行われ難いのが現状である。竹は地下茎による栄養繁殖で増殖するため増殖能力および攪乱耐性が高く、一旦竹林化すると駆除は困難である。早急かつ効率的に竹林整備を行うため、竹林の拡大に対して危険度の高い場所を広域的に予測し、管理計画へ反映させることが求められている。
しかし、人為的に導入された移入種かつ栄養繁殖を行う植物の分布拡大予測は、不均質な侵入履歴や分布の偏り、隣接効果などの制約事項が多く、さらに環境要因に対する非線形応答を示す場合もあり、一般的な統計モデルの適用が難しい。そこで本研究では兵庫県豊岡市を対象に、拡大前(1976年)と拡大後(2007年)間での竹林拡大の動態から、マシーンラーニング法のパッケージ;MAXENTを用い、分布拡大に貢献する要因を抽出して空間明示的なリスク評価を行った。解析では地下茎による栄養繁殖の影響を統制するため、拡大前の竹林パッチからの距離をバイアスとして重み付けした上で、物理的環境要因として斜面傾斜角度・斜面曲率・斜面方位・土壌湿度条件・全天日射量を変数とした。結果は、既存の竹林による隣接効果(拡大前の竹林パッチからの距離と隣接サイズ)が支配的であり、物理的環境要因の制約は顕著でなく、拡大を制限すると考えられていた傾斜については、中程度で広い範囲において拡大可能であった。このように物理的環境要因がほとんど分布拡大の制限要因にならない、竹林のルーズな特性が今日の繁茂につながっていると考えられ、物理的なセーフサイトは限定的であることが示唆された。