ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-189
*西沢 徹,中嶋信美,玉置雅紀,青野光子,久保明弘,佐治 光(国立環境研 生物圏環境研究領域)
日本は2007年現在で約213万トンのナタネ(セイヨウアブラナの種子)を輸入しており,これらの大半(約85%)がカナダから輸入されている。カナダにおける遺伝子組み換え(GM)セイヨウアブラナ(Brassica napus)の栽培面積から推定して,カナダから輸入されるナタネの60%程度がGMであると考えられる。国内のナタネ輸入港やそこに至る国道沿いでは,輸入されたナタネが輸送中にこぼれ落ちて発芽したものと考えられるGM個体が確認されている。当研究室では,鹿島港に至る茨城県稲敷市〜千葉県香取市〜成田市までの国道51号線沿い(約20km)において,GMセイヨウアブラナの逸出状況を2005年度から継続して調査している。2005年度から2008年度まで,同一調査区間でセイヨウアブラナの全数調査を行ってきた結果,出現個体数およびGM個体数はともに減少傾向が続いている。除草剤グリホサート耐性個体は,2008年度には1個体が確認されたのみであるが,調査期間中に毎年確認された。一方,グルホシネート耐性個体は,2005年度に確認された以外は,その後全く確認されていない。個体数の減少には,近年継続的に行われている国道51号線沿いの道路拡張や歩道の新設工事等の人為的攪乱の影響が大きいものと考えられる。一方で,輸入ナタネの陸揚げ港の一つである三重県の四日市港周辺およびここに至る国道23号線沿いで行われた予備調査によれば,年に数回の割合で除草が行われているにもかかわらずGM個体の出現率が国道51号線沿いよりも大きく,また,グルホシネート耐性個体の割合が高いことが報告されている。したがって,除草剤耐性品種の混入量や生産国の違いなど,各地で陸揚げされる貨物中のナタネの形質も逸出集団の形成には影響しているものと考えられる。