ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-196
*戸田春那,梶光一,神崎伸夫,酒井憲司(東京農工大学・農)
栃木県では平成年代に入った頃から、シカの個体数増加や分布拡大に伴い農林業被害、自然植生への影響が深刻化してきた。それらの問題解決のために平成6年に栃木県シカ保護管理計画が策定され、その計画において狩猟による捕獲は、個体数管理ツールのための重要な方策の一つとして位置付けられている。
しかし、狩猟者は減少・高齢化の一途をたどっており、その努力量には限界がある。このような状況の中で狩猟を通じた個体数管理を行なっていくためには、狩猟者を“効率的に配置すること”が必要であると指摘されている。
そこで、限られた狩猟者数(捕獲努力量)を効率的に活用するために、その最適な配置を明らかにし、シカ個体数管理の有効な方策を提案することを目的とする。
データは平成13年〜19年度猟期の狩猟カレンダーデータを用いる。狩猟カレンダーとは、狩猟者が出猟した際に出猟区画・捕獲数・目撃数を記録し、猟期終了後に県が回収するものであり、これにより5kmメッシュの区画ごとの努力量・捕獲数・目撃数・CPUE(捕獲数/努力量)・SPUE(目撃数/努力量)のデータが得られる。また、傾斜や標高、道路密度、森林率、土地利用や植生などの環境データも用いる。
これらのデータから、まずはシカの個体数の分布状況を把握し、それに基づき効率的な努力量の配置を検討する。そしてさらに、その効率的な配置と実際の努力量の配置を比較し、努力量の足りていない地域、つまり努力量を増やせば捕獲数が増えることが期待される地域を抽出し、その地域において聞き取り調査やアンケート調査を行なう。これにより、抽出された地域において、狩猟による捕獲努力量を増やすことが可能か、どのような対策をとると有効なのかといったことを検討する。