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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-202

釧路湿原温根内地区における水質・植生と土壌分解活性

*広木幹也,野原精一,井上智美(国立環境研)


釧路湿原は多様な植生を含む日本最大規模の湿原であるが、近年、土砂堆積やハンノキ林の拡大など、自然環境が変わりつつあり、それには、周辺の農地や山林の開発などによる土砂や栄養塩の流入が原因のひとつではないかと指摘されている。元来、湿原では低温、高水分環境下で有機物が蓄積して泥炭を形成していくため、枯死植物の分解に伴う栄養塩の循環が抑制された環境であると考えられるが、栄養塩や土砂の流入は直接、植物に栄養を供給するばかりでなく、土壌微生物の分解活動を促進することにより間接的に可給態の栄養塩類を富化し、植生などに影響を及ぼしている可能性もある。そこで、湿原周辺部において水質、植生、土壌微生物および泥炭の分解活性の間の相互の関係について調査した。

【調査地・方法】釧路湿原西部の温根内ビジターセンター周辺の木道(全長約2.6 km)沿いの12地点で調査を行った。低層湿原、高層湿原、ハンノキ林などを含む調査地域の西側は湿原を取り巻く針広混合林と接し、最も東側の調査地点はこれらの山林から約600 m離れていた。各調査地点で表面水水質(pH、EC、栄養塩類)、グルコシダーゼ活性(GLU)、セルロース分解微生物数、土壌微生物群集の炭素源利用性(Biolog法)を測定した。

【結果】西側の山林に近い調査地では表面水のEC、無機態窒素濃度が比較的高く、東側の高層湿原ではEC、pHともに低い貧栄様な環境であった。ハンノキ林内の表面水は無機態窒素、リン酸濃度ともに比較的高い傾向にあった。GLUはハンノキ林で高く、高層湿原で低い傾向にあった。また、土壌微生物群集の炭素源利用性から泥炭は大きく3つのグループ(低層湿原、高層湿原および分解の進んだ泥炭)に分けられるなど、水質、植生、土壌微生物群集および分解活性の間には互いに関連があることを示唆する結果が得られた。


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