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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PA1-204

アズマネザサの個体群構造における地上部と地下部との関係

*小酒井修(横国大院・環情),持田幸良(横国大・教育)


はじめに

近年里山等の二次林ではササが繁茂し、樹木の更新の阻害や生物多様性の低下が生じ、問題となっている。このようなササによる害を軽減するために、ササ地上部の刈り取りが行われている。

ササの地上部生産の基盤である地下部の性質を把握することはササの管理手法としての刈り取りを考える上で重要な意味を持つ。しかしながらササの地下部に関する知見は充分ではなく、基本的な様態さえ詳らかでないことが多い。

調査方法

本研究は関東地方に広く分布し、同地方の二次林に侵入し問題化することも多いアズマネザサを対象とし、(1)地下茎の基本的な様態・構造と地上部との関係を把握すると共に、(2)刈り取りによって生じるアズマネザサの構造の変化の解明を目的とした。

調査地を神奈川県横浜市の横浜国立大学構内とし、同大学構内の常緑広葉樹林林床、落葉広葉樹林林床、被陰のないササ草原、被陰がなくかつ年1回刈り取りの行われている刈り取り区域の4条件の調査区を設定し、ササ地上部および地下部の採取を行い、得られた試料を各条件間で比較した。

結果および考察

地下茎から生産される地上部の規模は開放区と樹林林床で異なった。開放区ではまず地下茎直径とほぼ等しい直径の一次分岐稈が形成され、それ以降は分岐次数を重ねるごとに直径が増加した。樹林林床では一次分岐稈の直径は地下茎直径の7割程度にとどまり、二次分岐以降の稈の直径はさらに細くなった。地上部に占める各分岐次数ごとの稈の割合は、一次分岐稈は開放区では全体の約6割を占める一方、樹林林床では3割以下となった。このことから樹林林床におけるアズネザサは地上部の縮小生産を行っていると考えられる。

刈り取り区におけるアズマネザサ地上部と地下部との関係は、開放条件下にあるにもかかわらず樹林林床におけるものと近似したものとなり、刈り取りによるササの生育の阻害が示唆された。


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