ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-225
*遠藤絵実(兵庫県大・院・環境人間),藤木大介(兵庫県大・自然研),坂田宏志(兵庫県大・自然研)
日本の針葉樹人工林の多くは放置され、様々な問題が起こっている。また、近年増加しているニホンジカ(以下「シカ」)によって下層植生に採食圧がかかっている。このため、放置された針葉樹人工林を広葉樹林に転換しようと試みても、シカに阻害され、転換が上手くいかない可能性が懸念されている。そこで本研究では、シカの採食圧下でヒノキ人工林をクヌギ林に転換する場合、防鹿柵の有無、植栽する苗のサイズの違い、下草刈りの有無により植栽したクヌギの生長と他の雑木を調査し、どの方法が適しているかを検討することを目的とした。
兵庫県内ではシカの密度が中程度である青垣町内のヒノキ人工林内に伐採地を設定し、各伐採地に下草刈りを行った区画と下草刈りを行わなかった区画を設けた。各区画内に防鹿柵を設置し、20cm, 50cm, 150cmのクヌギ苗を柵内外共にそれぞれ植栽した。
調査の結果、クヌギに対する採食率が高い伐採地と低い伐採地がみられた。採食率が高い伐採地では、20cm苗, 50cm苗で植栽1年半後から柵内外で樹幹長に有意差がみられたが、150cm苗ではあまりみられなかった。また、下草刈りの効果はみられなかった。一方、採食率が低い伐採地では下草刈りを行わなかった区画で、植栽4年後から柵外の方が樹幹長の生長が良かった。また、下草刈りの効果は柵内でみられた。
他の雑木の樹高については、採食率が低い伐採地の柵外は低い雑木の割合が高かったが、柵内では高い雑木の割合も高かった。そして、柵内のクヌギの20cm苗,50cm苗は雑木よりも樹高が低かった。
よって、シカの採食圧が高い地域で防鹿柵を設置せずに転換する場合は、採食を避けるために、大きなサイズのクヌギ苗を植栽する方が良いことが示唆され、シカの採食圧が低い地域では防鹿柵を設置しない方が良いことが示唆された。