ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-229
*志津伶奈(千葉大院・園),南 佳典(玉川大・農),沖津 進(千葉大院・園)
カナダ南西部バンクーバー島に生息するGreat Blue Heron(Ardea herodias)は早春から初夏にかけて集団で営巣を行う.営巣によって林床へもたらされる窒素やリンをはじめとする多くの栄養塩類は,営巣地やその周辺に生育する植物の栄養源となりえる.一方で継続的にもたらされる多量の栄養塩類が土壌の富栄養化の原因となり,植物の成長を阻害する事も予想された.そこで,営巣が営巣地における林床の植物種組成,植被率,土壌中に含まれるNO3-N,PO4-P,海洋性窒素(N15の割合)の量に与える影響について調査を行った.
巣の密度が高い場所では林床植物の種数や植被率は減少し,種組成は明らかに変化した.しかし,巣の密度の違いによって優占する種が変化することは無かった.土壌中に含まれるNO3-N,PO4-P,N15の割合は,巣の密度が高くなるにつれて増加した.営巣が行われることにより営巣地の土壌や植物に与えられる影響は巣の密度と関係性が認められた.
Great Blue Heronの営巣は海洋から多量の窒素やリンを林床へもたらし営巣地の植物に負の影響を与えた.しかし,営巣地の外部へと流出する海洋性栄養塩類は,営巣地周辺の植物にとっては成長を促進させるなど正の影響を与えているかもしれない.Great Blue Heronの営巣は,カナダ西海岸における海洋生態系と陸上生態系を結びつける重要な役割を担っていると結論づけた.