ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-231
*渡邉謙二,持田幸良(横浜国大・教育人間科),
鳥類にとって、縄ばりと行動圏は利用目的が異なる。このために森林性鳥類では縄ばり内の植生構造と行動圏内の植生構造に違いがあると考えられる。そこで本研究では、両者の植生構造の差異を4種の鳥類を取り上げ検討し、縄ばり内の植生構造の特性を明らかにした。
調査は三浦半島の二次林で行い、方法は鳥類については、ラインセンサス法とマッピング法を併用して認知手段別(Song,Visual,Call)の観察個体数と確認地点を記録した。植生構造は、調査域をメッシュ(25×25m2)に区切り、メッシュ単位で各階層の葉群充填率を調査した。解析に際しては、繁殖期におけるSongの観察地点を縄ばりとし、Visual,Callの観察地点を行動圏と定義し、各地点の観察個体数をメッシュごとに集計した結果を用いた。
ウグイス、オオルリの2種は、行動圏の観察個体数は、植生構造の最上位層の葉群充填率が高い方が多く、一方で縄張りの観察個体数が最も多かったのは最上位層の葉群充填率20%以下の植生であった。これは、縄ばりでは繁殖に関わるディスプレイに際して開いた空間が必要であり、行動圏では葉が密生することによって昆虫が増加するためと考察された。また、ホオジロは行動圏では観察個体数と最上位層の葉群充填率に負の相関を示したのに対し、縄ばりでは正の相関を示した。これはホオジロが草本の種子を採餌する種であり、また行動圏と縄ばりが森林の林縁部から草原にあるためと考察した。キセキレイは葉群充填率との相関がなかったが、縄ばりは行動圏と比して最上位層の葉群充填率が高い方に観察個体数が多かった。これはキセキレイが採餌を河川で行う種であり、またSongが樹上であるためと考察した。
以上から、森林性鳥類における縄ばり内の植生構造は行動圏内の植生構造とは異なるものであり、森林性鳥類の保全に関しては両者の違いを考慮する必要がある。