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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-234

花色の好みの地理的変異:ゲンノショウコ胚珠に対するゾウムシの食害パターン

*土松隆志(東大広域システム), 吉武啓(農環研), 宇津木望(東大広域システム), 清水健太郎(チューリヒ大), 伊藤元己(東大広域システム)


植物と植食者間の生物間相互作用の動態は、種内の地域個体群間ですら大きな変異があることが知られており、両者の共進化過程を解き明かす糸口として注目されている。ゲンノショウコには、その花色に関して赤または白花をつけるという顕著な遺伝的多型が知られている。また、トゲトゲクロサルゾウムシ(以下ゾウムシ)はゲンノショウコをはじめとするフウロソウ属植物の胚珠に産卵し、幼虫が種子内部を食害することが知られている。本研究では、食害者が植物の種内多型に及ぼす影響と植物の種内多型が食害者に及ぼす影響を解明するために、花色変異の地理的分布とゾウムシによる食害頻度を調査し、ゾウムシ・ゲンノショウコそれぞれの分子系統地理学解析を行っている。その結果、ゲンノショウコの花色には、東日本が白、西日本が赤という顕著な地理クラインが認められた一方で、中部・近畿地方では両者が分布し、同所的に混在する個体群も多数見つかった。また、2年間にわたる複数個体群におけるゾウムシ成虫の訪花頻度と幼虫の寄生率の調査から、ある赤白混在個体群ではゾウムシは有意に白花を好んで訪花し、幼虫の寄生率も高いことが明らかになった。さらに、別の混在個体群ではゾウムシの花色に対する有意な選好性はほとんど見られなかった。この個体群では、ゲンノショウコは近縁種のハクサンフウロと同所的に生育しており、ゾウムシはゲンノショウコに比べて顕著にハクサンフウロを選好する傾向があった。ゾウムシ-ゲンノショウコ間の相互作用に見られた複雑な地理的変異は、同所的な近縁種の存在などの群集組成に影響されている可能性がある。


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