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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-236

種子がなくても葉で増える?―餌転換を行う種子食昆虫の生活史と資源利用

*藤田真梨子,前藤薫(神大院・農),松井淳(奈教大・生物),寺川眞理(広大院・国際協力),駒井古実(大芸大・環),湯本貴和(地球研)


捕食者飽食仮説によれば、植物は凶作年に捕食者の密度を下げ、豊作年には捕食者の増加が追いつかず捕食から逃れた健全な種子が多数生産される。この仮説が成り立つためには、捕食者が餌資源を種子に依存していることが重要であるが、ヤマモモ Myrica rubra の種子捕食者であるヤマモモキバガ Thiotricha pancratiastis は新葉も餌資源とすることが知られている。このような相互作用系では、凶作年に捕食者の密度が下がらず、仮説が成り立たない可能性がある。本研究ではヤマモモにおいて捕食者飽食仮説を検証するともに、餌転換を行う種子食昆虫の資源利用を明らかにしたいと考えた。

ヤマモモは常緑高木で液果を実らせる。結実量と食害率の年変動を調べるため、2005年から4年間、果実登熟期の樹冠下にリタートラップを設置して果実を採集した。果実は計数後切開し、食害の有無を調べた。ヤマモモキバガの成熟幼虫は地面に落下後蛹化するので、2月から12月にリタートラップを用いて落下のパターンを調べた。また成虫と若齢幼虫を野外で採集し飼育下で発育の様子を観察した。

種子食害率は、豊作の2005年と2007年がそれぞれ40.6%と5.8%、凶作の2006年と2008年が68.7%、15.2%であった。必ずしも豊作年に食害率は低下しなかった。ヤマモモキバガは年間に少なくとも4世代を経過しており、野外では果実食幼虫が5月、葉食幼虫が6月、9月、10月に落下した。ヤマモモキバガの個体群動態には結実量だけでなく展葉の頻度も関係しており、それが翌年の種子食害率に影響を与えていると推察される。


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