ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-241
辻かおる(京大・理), 曽田貞滋(京大・理)
雌雄異花植物が食植者から被る食害の程度は雌より雄の植物の方が大きいという現象は様々な植物‐食植者間の相互作用で観察されている。この現象は葉などの栄養器官の食害について多く報告されており、花や蕾といった繁殖器官での報告は少ない。栄養器官と繁殖器官では栄養や防衛の仕方が異なるため、雄に偏った食害の要因も栄養器官と繁殖器官では異なっている可能性が大きい。これまで、栄養器官では雄がより食害される要因は解明されているが、繁殖器官で雄が雌よりも多く食害される要因は明らかにされていない。本研究では、雌雄異株植物のヒサカキ(Eurya japonica)とその花を専食するソトシロオビナミシャク(Chloriclystis excisa)を対象として、雄花が雌花よりも多く食害される要因を明らかにするため、野外観察・室内実験を行った。
野外観察により、ソトシロオビナミシャクはヒサカキの雌花より雄花を多く利用していることが明らかとなった。また、室内実験では成虫は雌花には産卵せず、幼虫は雌花を食べると死亡した。幼虫が雌花で死亡した要因は2つ考えられる。一つは雄花にある花粉が重要であるため雌花では死亡してしまうこと、もう一つは、雄花よりも雌花の防御が発達しているため雌花では死亡してしまうことが考えられる。しかし、花粉を除去した雄花で飼育しても、幼虫は死亡せず正常に成長した。このことから、雄花が雌花より、より多く食害されるのは雄花より雌花のナミシャクに対する防御が強く、ナミシャクもまた、不適な雌花を避けて産卵しているためであることが明らかとなった。