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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-243

ヒサカキの種子散布に関わる生物間相互作用が三宅島の森林生態系回復に果たす役割

阿部晴恵(日本モンキーセンター), 山本裕(日本野鳥の会), 長谷川雅美(東邦大学)


2000年の噴火によってその森林の70%近くが破壊された三宅島において、火山ガスに対する耐性が強く噴火の高被害地域においても繁殖活動を行っている植物は、その森林生態系の回復にとって重要な役割を果たすと考えられる。そこで本研究では、高被害地域でも果実をつけ、鳥類を誘引していることが確認されているヒサカキを対象とし、本種に関わる生物間相互作用が三宅島の森林生態系回復に果たす役割を評価することを目的とした。調査地は、火山ガスの影響を受け続けている2地点(A)、2003年時点では噴火の影響をやや強く受けていたが、その後火山ガスの影響が低下している3地点(B)、火山ガスの影響が低い4地点(C)の計9地点を設定した。各調査地において、調査木(雌株)5-6本を選定し、2008年度の着葉率、花芽数、初期の結果数(受粉率)、初期の果実の死亡率、果実の消失率、鳥類の訪花頻度、鳥類の糞内における植物の種構成の7項目について調査を行った。

着葉率は、A地点では60%以下と低い値であったものの、それ以外の地点では90%以上であり、火山ガスの低下によって着葉状況も回復傾向にあると推察された。同様に、花芽数もA地点では少ないものの、それ以外の地点ではガスによる花芽形成への影響はほとんどないと考えられた。一方、受粉率はA地点で平均23.1%、それ以外の地域では平均4.7%であり、A地点でより効率的な送粉が行われていることが示唆された。果実の消失率、鳥類の訪花頻度は火山ガスの影響が大きい地点でより高くなる傾向があり、種子散布も噴火の影響が大きい地点で効率的に行われていることが予測された。鳥類の糞内には、C地点では様々な植物の種子が確認されたものの、A、B地点ではほぼ昆虫及びヒサカキの種子のみであり、ヒサカキ以外の植物種の種子散布はほとんど行われていないことが示唆された。


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