[0] トップ | [1] 目次

ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-245

植物の揮発性物質を介した植物間コミュニケーションが節足動物群集構造に与える影響

*米谷衣代, 高林純示(京大・生態研)


食害または傷を受けた植物は健全な植物とは質や量の異なる揮発性物質を放出する。この食害又は傷害誘導性の揮発性物質は、それを受容した健全な植物の防御関連遺伝子の発現を誘導し、植食者に対する抵抗性を高める場合が報告されている。本講演ではこの揮発性物質を受容した健全植物を“立ち聞き植物”と呼ぶ。我々は、ヤナギ科の植物の中で日本に生育するジャヤナギ(Salix eriocarpa)に注目し、食害誘導性の揮発性物質の受容によって起こる誘導反応が植物上の節足動物群集の形成に影響を与えるかを調べた。室内実験により、ヤナギ科植物のスペシャリスト植食者であるヤナギルリハムシ(Plagiodera versicolora)の食害を受けたジャヤナギの揮発性物質が健全株に誘導反応を引き起こし、ヤナギルリハムシに対する抵抗性を高め、食害を抑えることを示した。次に、ヤナギルリハムシ食害誘導性の揮発性物質を受容したジャヤナギ立ち聞き株ポット、ヤナギルリハムシによる食害株ポット、健全株ポットをヤナギ植物の圃場に各2ポットずつ、計6ポットを1区画として、全部で8区画を設置した。節足動物の設置後1日の初期移入、2―3日目の初期定着、その後の動態を10日間調べた。その結果、ヤナギルリハムシ成虫の進入の時期が処理間で異なり、健全株、立ち聞き株、食害株の順に個体数の増加、その後の減少が見られた。初期の移入定着にはっきりとした違いが見られなかったその他の植食者、捕食者も含め1ヵ月ごとに群集組成を調べた。それら節足動物群集構造の変化、処理間での違いについて報告する。


[0] トップ | [1] 目次