[0] トップ | [1] 目次

ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-247

地上部の植食がブタクサの分解過程に与える影響

*三浦和美,大串隆之(京大 生態研センター)


植物が植食性昆虫による食害を受けた後、葉の量や質が大きく変化する(Karban and Baldwin 1997)。このため、食害を受けた植物個体のリターの量や質の変化が、土中でのリターの分解速度や養分動態に間接的に影響を及ぼすことが明らかになりつつある(Hunter 2001, Chapman 2006, Crutsinger et al. 2008)。これまで、木本植物を中心に植食性昆虫の加害がリターの分解速度や養分動態に及ぼす間接効果が注目されているが(Schweitzer et al. 2005)、草本植物に及ぼす影響に関する知見は少ない(Crutsinger et al. 2008)。

北米原産の1年生草本のブタクサは、欧州、ロシア、中国や豪州などの世界各地に広まった帰化植物の代表である。日本には明治初期に侵入後、昭和に入ってから全国各地に分布を広げ、二次遷移初期の場所で優占している。日本に帰化したブタクサは、近年、北米から侵入したブタクサハムシやアワダチソウグンバイによって、しばしば枯死するほどの食害を受けている。そのため、ブタクサが優占する場所のリターを介した養分動態に、これらの昆虫による植食が間接的に影響する可能性がある。

本研究では、これらの昆虫によるブタクサの葉の食害によるリターの質の変化と土中での分解過程に与える影響を調べた。特に、(1)食害の程度が異なるブタクサの枯葉間で分解速度が異なるか、リターバッグを用いて比較した。(2)養分動態として、窒素の動態を把握した。(3)枯葉の分解速度や養分動態に影響する要因として、枯葉に含まれる総フェノール性化合物とリグニンの濃度を計測した。その結果、食害の程度が大きな葉ほど分解が速く、また窒素の不動化が進む傾向が認められた。植食性昆虫がリターの分解過程と養分動態に及ぼす間接効果について検討する。


[0] トップ | [1] 目次