ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-254
*早川悟史,林田光祐(山形大学農学部)
樹洞を利用する野生動物にとって、樹洞は生息の場として必要不可欠な資源であるため、利用可能な樹洞がどの程度存在するのかという樹洞の資源量を把握することは野生動物の生息地管理の面から重要であると考えられる。そこで本研究では、夜行性の樹上性げっ歯類であるムササビに着目し、利用が確認された樹洞の形態的特徴から、ムササビが利用可能な樹洞形態について検討した。
2004〜2008年の間に山形県内でムササビの生息が確認された林分に形成されていた樹洞437個を調査対象とし、小型CCDカメラを用いた内部観察による動物の利用状況の把握と、樹洞の形態(樹洞の入口が形成された高さ・入口面積・入口部から樹洞内部の上下方向に広がる空間の天井・底面までの深さ・内部容積の推定値)の計測・算出を行った。
ムササビの利用が確認された樹洞は28個で、その他にムササビが利用していたと考えられる敷藁が7個の樹洞で確認された。いずれも地面からの高さが3.9m以上の高所に形成された樹洞であり、入口を複数持つ樹洞が多く、入口は100cm2以下の小さな面積のものが多かった。内部容積は0.005〜0.24m3と大小様々であった。各形態の計測値の最小値と最大値から利用可能な樹洞形態の条件を設定し、全ての樹洞の中で条件を満たす樹洞がどのような動物に利用されているかを調べたところ、条件を満たす樹洞は73個あった。このうち、他の動物種による利用が確認された樹洞が8個あり、ムササビの利用可能な樹洞が、他の動物種と重複していることがわかった。動物種の利用が確認されなかった樹洞は30個あったが、調査林分ごとに見ると樹洞資源の少ない林分もあり、このような林分においては樹洞資源をめぐる競合が起きている可能性があることが示唆された。