ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-258
*安東義乃,内海俊介,TP Craig,大串隆之
ある地域に定着した外来植物は、侵入地における生物と新たな相互関係を作り出している。外来植物上の昆虫群集が原産地と侵入地で異なる特徴を示すことが報告されており、一般に、侵入地の植物上では外在性のジェネラリスト昆虫種が多く、スペシャリスト昆虫や内在性昆虫種は少ない傾向にある。生物的あるいは物理的環境や植物と昆虫の関係性の違いがその要因として挙げられている。近年では、植物の遺伝子型が昆虫群集の構造を決定する上で大きな役割を果たしていることが指摘されており、外来植物上においても昆虫群集の構造がその遺伝子型に影響される可能性がある。
本研究では、外来植物セイタカアワダチソウを用いて、植物の遺伝子型の違いが侵入地と原産地の昆虫群集に与える影響を調べた。セイタカアワダチソウの10クローンを侵入地と原産地の実験圃場に植え、その上で見られた昆虫を記録し、植物形質を測定した。侵入地も原産地も、クローンの違いによって昆虫の群集構造は有意に異なっており、セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシとアワダチソウグンバイがその違いに大きく貢献していた。これらの昆虫はともに、セイタカアワダチソウと同じ北米由来の外来昆虫であり、昆虫群集に植物の形質の変化を介して大きな影響を与えることが示唆されている。アブラムシを著しく捕食するテントウムシやクモ、クサカゲロウの幼虫が、それぞれのクローンにおけるアブラムシの密度に反応したため、捕食者の群集構造もクローンによって有意に異なった。原産地で行ったアブラムシとグンバイの接種実験により、クローンによって異なる植物の形質がこれらの昆虫の選好性やフィットネスに影響することが明らかとなった。この研究は植物の遺伝子型の違いが侵入地と原産地の昆虫群集に与える影響を明らかにしただけでなく、その影響における外来昆虫の役割の大きさも示唆するものである。