ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-259
*中島亜美(東京農工大・農),正木隆(森林総研),小池伸介(東京農工大),山崎晃司(茨城県博),梶光一(東京農工大)
果実は多くの野生動物に利用されている食物資源である。野生動物は食物資源量の変動により食性や生息地利用を変えるため、その生態を理解するためには、動物側のデータと同時に果実量を把握することが重要である。それにも関わらず、果実の情報を把握している事例は少ない。その原因の一つは、簡便かつ高精度な果実量の測定法が確立していなかったことにある。そこで、双眼鏡で単位時間当たりに観察できた果実数を計るKoenig方式は簡易で観察場所の制限も少ないが、単なる目視よりも精度の高いデータを得ることができると期待される(正木・阿部 2008)。
そこで本研究ではKoenig方式と単位面積あたりの結実量(または果序数)の換算式を液果・堅果7種を対象に推定した。また、結実量の観察には果実の成長や落果、葉量のフェノロジーなどが影響すると考えられるため、最適観察時期についても検討をおこなった。
2008年(ミズナラは2007年)、栃木県日光市足尾地域および茨城県小川群落保護林において各樹種につき4から7個体を選定し、Koenig方式で結実度を測定した。それと共に樹冠下に設置したシードトラップで落果密度を測定し、両者の間にべき乗関数をあてはめた。また、足尾地域においては、結実期間中に観測を10日おきにおこなった。
その結果、換算式のR2値は0.12(タカノツメ)から0.94(クリ)まで樹種により大きく異なった。この原因としては果実や果序の色・形状や配置による観察のしやすさの違いが考えられる。また、果実の最適観察時期については、時期が遅いと落葉が進み、また果実の成熟により観察が容易になるが、一方で落果が進み結実量が過小評価になる可能性が示されたため、この方法による計測は、結実期間の比較的早い時期に行うことが望ましいと考えられた。