[0] トップ | [1] 目次

ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-261

種間の類似度と遺伝的距離との相関が、注目する形質によって異なるのはなぜか

伊藤洋(東大・総合文化)


空きニッチに遭遇した生物種が適応放散する場合、複数の形質において同時に放散が促され得る。この場合、種分化する際に放散する形質(「種分化形質」)と、分化した種の生態的住み分けの進化を担う形質(「住み分け形質」)は、異なる可能性がある。これは、形質によって突然変異の起こり易さや交配可能性への影響が異なるからである。本研究は進化シミュレーションにより、この現象が起こり得ることを示した。この動態において、住み分け形質における差異が十分に大きくなると、種分化形質の差異は逆に減少することがある。すなわち、住み分け形質の類似度は遺伝的距離と負の相関を持つが、種分化形質の類似度は正の相関を持つ場合がある。どのような形質も、放散が促され得るのであれば、種分化形質や住み分け形質となり得る。従ってこの機構は、種間の類似度と遺伝的距離との相関が、注目する形質によって異なることの一般的な説明の1つかもしれない。


[0] トップ | [1] 目次