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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-267

体の伸長と鰭の退化に伴う海岸間隙性ミミズハゼ類の多様化

*山田朋彦,川北篤,加藤真(京大院・人環)


常に造山運動の支配下にあった日本列島は、急峻な地形と豊富な降雨によって浸食を繰り返し、複雑な海岸線とあいまって、そこには多様な砂礫海岸が形成された。このような砂礫海岸の潮間帯には間隙生活に適応した多様なミミズハゼ属魚類が見られる。本研究は、砂礫海岸だけでなく、日本列島のさまざまな環境から採集したミミズハゼ属魚類の分子系統解析をもとに、形態や生態がどのような環境にどのように適応しつつ多様化していったかを考察したものである。

ミトコンドリアと核の計7遺伝子に基づく分子系統解析の結果、ミミズハゼ属を含む近縁種群は狭義のミミズハゼ属、シロクラハゼ属、セジロハゼ属、コマハゼ属に分けられ、多数の隠蔽種が存在することが明らかになった。これら広義のミミズハゼ属魚類には、脊椎骨数の増加や、鰭や鱗の退化といった間隙生活への前適応が見られるが、潮間帯の礫間に適応した狭義のミミズハゼ属では、動的礫間環境への進出に伴いさらに著しい脊椎骨数の増加と鰭の退化が見られた。ミトコンドリア遺伝子の分子時計を用いた年代推定の結果、狭義のミミズハゼ属は500−1000万年前の中新世後期に起源したと推定され、その後潮間帯の礫間環境へ移行するとともに急速に多様化したことが分かった。ミミズハゼ属では、体長や脊椎骨数が種ごとに異なり、様々な間隙サイズの砂礫帯を種間で棲み分けていることから、日本列島に特有の多様な砂礫海岸の存在が、ミミズハゼ属魚類の急速な種分化を導いたと考えられる。


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