ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-271
*森照貴(北大・環境科学), 齊藤隆(北大・FSC)
群集が形成されるプロセスを明らかにすることは、群集生態学の重要課題の一つである。群集の形成プロセスに影響を及ぼす要因として、競争などの生物間相互作用が挙げられる。特に同じギルドに属する生物種は、餌資源を巡っての種間競争が強く働くと考えられている。しかし、必ずしも競争が群集形成に影響を及ぼすわけではなく、ギルドやギルドに含まれる生物種によって異なる報告がされている。この理由として、ギルドによって必要な資源量や生息地の複雑性、ギルドに含まれる生物種の密度などが異なるためと考えられる。そこで、本研究ではギルド分けが簡便な河川底生動物群集を対象に、外的要因(環境条件)と内的要因(競争)が群集の形成プロセスに及ぼす影響に明らかにし、さらに、個体数および分類群数の決定機構を明らかにすることを目的とした。
調査は北海道沿岸域を流れる30の山地河川で行い、得られた底生動物を3つのギルドに分けた(藻類食者・有機物食者・捕食者)。ギルド内での種間競争の影響を明らかにするために、ギルド毎にC-scoreを求め、ランダム群集との比較を行った。その結果、藻類食者ギルドから得られたC-scoreは有意にランダム群集から得られたC-scoreと異なっていたが、有機物食者ギルドおよび捕食者ギルドのC-scoreは、ランダム群集と有意な違いはなかった。つまり、河川底生動物群集の中でもギルドによって群集形成のプロセスが異なっていた。一方、降水量や餌資源量などの環境要因を測定したところ、各ギルドが受ける要因に大きな違いはなかった。本研究より、河川底生動物の群集形成に対して降水量などの環境要因が重要であるが、藻類食ギルドについては種間競争という群集内部のプロセスも重要であることが示された。さらに、個体数と分類群数の関係から、藻類食者ギルドの分類群数の決定機構に競争が大きく関係していることが示唆された。