ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-273
*田中智之(北大・環境),野田隆史(北大・地球環境),仲岡雅裕(北大・フィールド科学),山本智子(鹿児島大・水産),堀正和(瀬戸内水研),奥田武弘(東北水研),熊谷直喜(千葉大・自然科学),島袋寛盛(千葉大・自然科学)
種多様性の緯度勾配を維持するメカニズムの一つとして、低緯度ほど種間のニッチ分割が進んでいることが考えられる。具体的には、低緯度ほど同種が空間的に集中分布し、また地域種プールからランダムに種を抽出した仮想群集の分布と実際の分布との差(ノンランダムネス)が高いという仮説が立つ。Okuda et al.(in press)は、日本列島太平洋沿岸の北海道から九州まで緯度の異なる6地域で岩礁潮間帯固着性動物群集の調査を行い、上記仮説を検証した。しかし、彼らの結果はそれらの緯度による有意な違いを示さなかった。
そこで我々は、空間的ニッチ分割については有意な結果が出なくても、低緯度ほど種間の「時間的」ニッチ分割が進んでいるのではないかと考えた。この場合、低緯度ほど同種が時間的に集中分布し、また時間的な分布のノンランダムネスが高いのではないかという仮説が立つ。したがって、我々はOkuda et al.(in press)よりも長期に渡る調査データを用いてこの仮説を検証する。
我々は、Okuda et al.(in press)と同じ共同調査を、基本的には春、夏、秋の年3回、2002年から2008年までの7年間行った。調査項目は、生物被度は毎回、存否は年1回以上調査した。解析は基本的にOkuda et al.(in press)と同じ方法で行う。つまり、(1)同種の時間的な集中分布と、(2)時間的に累積した種プールからランダムに抽出した仮想群集の種組成と一時点で観察された実際の種組成との差、の緯度による違いを検出する。