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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-276

水田における栽培管理方法がトンボ類幼虫にあたえる影響

*中西康介(滋賀県大院・環境科学),蒲原漠,田和康太,沢田裕一(滋賀県大・環境科学)


水田は農業生産の場所であるが,生物多様性保全の場所としても認識されつつある.水田に生息する生物の代表であるトンボ類は,水田の象徴として昔から人々にとって身近な存在であった.しかし近年,乾田化や農薬の散布などの影響で水田の環境が変化し,アキアカネなどの減少が報告されている.そこで,本研究では栽培管理方法の違いが,水田に生息するトンボ類幼虫の種数や個体数にどのような影響をあたえるのかを調べた.

調査地は滋賀県高島市の山間部に位置する水田である.調査水田として慣行,減農薬,無農薬,冬期湛水の4種類の栽培管理方法を取り入れている水田を,それぞれ2筆,合計8筆選んだ.調査期間は2008年4月から9月までで,期間中週1回,各水田でタモ網を用いてすくい取り採集を行なった.採集されたトンボ類幼虫のうち,同定の困難な種については研究室に持ち帰り,羽化させて同定した.また,同時に採集されたその他の水生生物の個体数,水田の水深・植生なども調べた.調査の結果,合計で4科7属12種のトンボ類幼虫が採集された.採集された終齢幼虫のうち個体数がもっとも多かった種がアオモンイトトンボ属の1種,次いでコノシメトンボ,ナツアカネであった.若齢幼虫は,シオカラトンボ属,イトトンボ亜目,アカネ属が採集された.慣行田や減農薬田では,無農薬田や冬期湛水田と比べて個体数が極めて少なく,ほとんどが若齢幼虫であった.また,無農薬田でアカネ属,冬期湛水田でイトトンボ亜目の個体数が多い結果となった.一方,種数については,冬期湛水田がもっとも多く,2筆あわせると本調査地で出現した12種全種が採集された.これらの結果から,トンボ類幼虫の種数や個体数に,湛水期間や農薬が影響をあたえていると示唆された.


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