ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-291
*高井裕美(島根大院・環境資源),星川和夫(同)
陸生貝類は、腹足による匍匐しか移動手段を持たないため移動能力が低く、古くから生物地理学研究の対象として注目されてきた。しかし、これまでの研究の多くは博物学的か、あるいは個別の種を取り扱っており、群集レベルの研究は少ない。そこで本研究では、隠岐諸島各所における陸生貝類群集の特徴を生物地理学と関連づけて考察した。
隠岐諸島は島根県東部の島根半島から北方約60km、北緯36度付近の日本海上に位置し、4つの住民島と200余りの小島から成り立っている。住民島のうち本土に近い3つの島、すなわち西ノ島・中ノ島・知夫里島は島前、その北東に位置する大きな島は島後と呼ばれている。各島の面積は西ノ島が約56km²、中ノ島が約34km²、知夫里島が約14km²、島後島が約242km²である。
本調査は、島後島12地点、西ノ島5地点で行った。調査地を照葉樹林に統一し、なるべく島全域を調査できるよう分散させて設定した。調査を行った結果、11科19属26種706個体(島後島:23種498個体、西ノ島:21種208個体)の陸生貝類が採集された。島後島の各調査地点における各種の採集個体数を変数として、主成分分析およびクラスター分析で群集の類似性を解析した結果、島後島北東部は他の調査地点と異なる傾向を示し、固有ベクトルおよびクラスターのまとまりが見られた。西ノ島のデータを加えて同様の解析を行った場合もこの傾向は変わらず、やはり島後島北東部はまとまった傾向を示した。これは、島後島北東部の種組成もしくは各種の個体数の構成比が他の調査地点と異なることを意味する。この特異的な群集がどのような要因によって形成されているのか、さらに解析を進めたい。