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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-293

富士山火山荒原における一次遷移に伴う土壌微生物群集の変化:リン脂質脂肪酸を指標として

*吉竹晋平(早稲田大・院・先進理工),藤吉正明(東海大・教養),中坪孝之(広島大・院・生物圏),増沢武弘(静岡大・理),小泉博(早稲田大・教育)


富士山南東斜面では、1707年の宝永噴火に端を発する一次遷移に沿って、植生がパッチ状に生育してできる「島状群落」を見ることができる。本研究では、この島状群落の発達に伴って土壌微生物群集がどのように変化するのかを明らかにするため、微生物の細胞膜成分の1つであるリン脂質脂肪酸を指標として、土壌微生物のバイオマスと群集構造の変化を調べた。

2008年7月中旬に富士山南東斜面上において、裸地(Bare)、主に先駆植物であるイタドリからなる島状群落(Stage I)、イタドリ以外の草本類も混在している島状群落(Stage II)、中央部にカラマツが存在する島状群落の辺縁部(Stage IIIa)および中央部(Stage IIIb)、そしてこれら島状群落が存在するエリアに隣接しているカラマツ林(Forest)に調査区を設けた。各調査区から鉱質土層を採取し、土壌理化学性分析とリン脂質脂肪酸分析を行った。

微生物バイオマスの指標である全脂肪酸量は裸地では非常に少なかったが、裸地―島状群落―カラマツ林と遷移が進行するに従って増加した。また、全脂肪酸量と土壌有機物量との間に正の相関が認められたことから、土壌有機物の蓄積が微生物バイオマスの増加に寄与していることが示された。しかし、島状群落のStage I―Stage III間では全脂肪酸量や土壌有機物量には著しい差は認められず、島状群落で植生が変化しても微生物バイオマスには大きな影響がないことが示された。一方、群集構造の指標である脂肪酸組成はStage I―Stage III間においても変化していたことから、島状群落での植生の変化は土壌微生物の群集構造に影響を及ぼしている可能性が示唆された。


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