ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-294
*川越みなみ,上條隆志,田村憲司(筑波大・生命環境)
陸上生態系を植生―土壌系として考えると、生態系の構造は地上から地下への炭素分布パターンと定義できる。大規模撹乱である火山活動は、生態系の破壊を起こし、裸地化した新しい地形面を形成する。本研究では、三宅島2000年噴火の火山灰堆積により裸地化した地域における、植生―土壌系の初期発達過程を、植生、土壌生成、およびこれらを通して起こる炭素蓄積過程から明らかにすることを目的とする。
三宅島西部の伊ヶ谷7(544m)、伊ヶ谷8(443m)、伊ヶ谷9(379m)を調査地とし、植生調査、土壌断面調査、刈り取りによる植物体とリターの現存量測定、土壌の炭素蓄積量の測定を行った。
伊ヶ谷7は植被率が低く、ほぼ裸地の状態であった。O層の生成や植物根の侵入は観察されなかった。植物体の蓄積量合計は、102g/m2であった。伊ヶ谷8はハチジョウススキが優占する草本群落であった。O層が2cm生成し、植物根は5cmの深さまで観察された。植物体の蓄積量合計は1583g/m2であった。伊ヶ谷9はオオバヤシャブシとハチジョウススキが優占する低木と草本が混在する群落であった。O層が6cm生成し、植物根は10cmの深さまで観察された。植物体の蓄積量は3442g/m2であった。炭素蓄積量のうち、土壌炭素量の占める割合は、伊ヶ谷7では83%、伊ヶ谷8では42%、伊ヶ谷9では34%であった。植生が未発達な地点ほど土壌(火山灰)中の炭素の割合が高くなっていた。火山灰上の植生―土壌系の初期発達過程において、植生の発達とともに土壌生成が進行する。一方、土壌炭素の占める割合は、植生の発達とともに減少することが示された。