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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-304

雪解け時期の違いが稚樹の開葉時期および成長量に与える影響

*伊藤公一(鳥取大・農), 佐野淳之(鳥取大・農)


多雪地帯における林床植物の芽生えや稚樹の開葉時期は積雪から解放されるタイミングに依存しており、高山性の多年生草本では風衝地で早く雪田で遅くなる傾向が認められている。近年では気候変動が森林の構造に与える影響について注目されており、積雪量の変動は林床植物にとって大きな影響があるとされている。しかし、次世代の森林を担う稚樹が積雪量の変動に対しどのような反応を示すのかはあまり研究されていない。本研究では同一林分内で積雪量の異なる2つのサイトを比較することで、雪解け時期が変化すると稚樹の開葉フェノロジーがどの程度変化し、その結果、稚樹の成長にどのような影響が与えられるかについて検討した。鳥取大学教育研究林「蒜山の森」において、積雪量が異なる2つのサイト内にプロット(20m×20m)をそれぞれ1ヶ所設置し現在の林分構造を調査した。またプロット内部に8ヶ所のサブプロット(2m×2m)を設け、樹高1 m以下の落葉広葉樹について開葉時期と成長量を計測した。積雪量の少なかったサイトでは雪解け時期が早く、ほとんどの樹種で開葉時期が早くなった。クロモジやミヤマガマズミではサイト間での開葉時期にあまり差がなかったが、ヤマモミジやガマズミではサイト間で比較的大きな差が認められた。このことから樹種間で雪解けに対する反応が異なることが示唆された。また、稚樹の当年伸長成長量については、サクラ属で開葉が早いほど成長量が大きくなる傾向が認められたが、他の樹種での有意な関係は認められなかった。これらのことから、サクラ属の稚樹は春先に得た光合成産物を伸長成長へ投資している可能性が示唆された。このように環境変化がもたらす稚樹へ影響は樹種によって異なることから、気候変動後の森林構造の変化を推測するにはそれぞれの樹種ごとの特性を把握することが重要である。


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