ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-305
*小嶋智巳(東北大・院・生命), 酒井聡樹(東北大・院・生命)
多くの草本植物が、クローナル繁殖と種子繁殖の両方を行う。両繁殖様式への投資比は非常に多様に分化している。そして、さまざまな投資比の種が同じ群集に共存していることが一般的である。本研究では、どのようなメカニズムでこの共存が可能となるのかを探る。
クローンと種子では、定着率・散布距離・生産コストなどが異なる。これらを踏まえたうえで、これまで多くのモデル研究が、生育適地の不均一な空間配置や定期的な撹乱を仮定することで、両繁殖の混合戦略の進化を説明してきた。しかし、実際の群集で見られるような、複数の投資戦略の共存を説明するモデルはない。
これを説明するために私たちは、成長速度と生存率のトレードオフに着目した。一般に、成長速度の高い種ほど生存率が低いという関係がある。成長速度が低い種は攪乱に対する耐性が強く、攪乱下での生存率が高い。いっぽう、種子繁殖の意義の一つは、広範囲に多数の種子を散布することによって、撹乱などによる局所的な絶滅から逃れることであると言われる。であるならば、撹乱耐性があって死亡率の低い種は、種子繁殖にそれほど投資する必要がないのではないか。その結果、成長速度が低くクローン繁殖に多く投資する種と、成長速度が高く種子繁殖に多く投資する種とが共存するのではないか。
これを確かめるため、本研究では、格子環境での個体ベースシミュレーションを行った。その結果、成長速度と生存率のトレードオフを考慮することで、クローン繁殖と種子繁殖への資源分配率が異なる種が共存可能となることがわかった。共存条件は、撹乱の規模と頻度の影響を強く受けることが分かった。