ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-309
*小山未奈(東農大),正木隆(森林総研),佐藤明(東農大)
近年、シイタケ原木やパルプ原料として伐採された落葉広葉樹二次林はその後放置されていることが多い。ギャップ更新や火入れ攪乱後の動態と異なり、大面積皆伐後の二次林の動態は、種子散布能力や成長様式等の種特性により初期群落組成が決まり、その後の動態の方向性が左右される。本研究では皆伐二次林の初期再生過程の解析から、構成樹種の成長特性を類型化し、近隣の成熟二次林(小川群落保護林、以下小川群落)との比較から、皆伐という攪乱が森林群集に及ぼす影響を解析した。
北茨城市の小川群落から約2km離れた、2006年秋〜冬に皆伐された落葉広葉樹林(4.39ha)に東西南北方向のクロストランセクト(計340m)を設け、5m間隔のコドラート(各1x2m2、計68個)内における全木本種の地際直径と幹長を計測、植生調査を2007〜8年の2年間行った。また主要樹種について各種5本を伐採、乾重を器官別に計測した。
現在の群落平均高は1.49m、BA合計は2,122.8m2ha-1であった。同化器官(以下、葉)と非同化器官(以下、枝・幹)の乾重量間のアロメトリから、現優占樹種を分類した。現最大優占種であるウワミズザクラ、ヤマザクラ等は枝・幹を先行成長させるタイプ、小川群落で林冠優占種であるコナラ・クリは枝・幹よりも葉への配分が多いタイプ、タラノキやヤマウルシなど先駆樹種はその両者の中間的な性質を示した。また小川群落の主要構成種であるアカシデやヤマグワ等もタラノキ等と同様の傾向を示した。以上から、本調査地ではサクラ類やヤマウルシ等の樹高成長を優先させる種群が群落上層を優占していた。これらは小川群落内にも生育していることから、現在の成熟林での多様な種構成も過去の伐採攪乱の影響を反映しているものと考えられる。