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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-314

青森県猿ヶ森における埋没林の樹種組成および生育環境の復元

*箱崎真隆(東北大・院・生命科学), 吉田明弘, 星野安治, 大山幹成, 鈴木三男(東北大学植物園)


青森県下北半島の太平洋岸に位置する猿ヶ森地域は、鳥取砂丘と並ぶ規模の大砂丘地帯(南北約17 km) であり、ヒバ(ヒノキアスナロ)埋没林の産地として知られている。先行研究では、埋没木より約2,000年前から約500年前の14C年代値が得られており、砂丘の移動が埋没林の主な成因であることが明らかにされている(千釜ほか, 1998; 岡本ほか, 2000)。現在ではこの地域を含め、低地に分布するヒバは稀であり、この埋没林の古生態を明らかにすることは、歴史時代以降、全国的に人為活動で失われたと推定される「低地の生態系」を復元する意義をもつ。しかし、これまでにこのような研究はほとんどなされておらず、低地に分布するヒバの生育環境は未解明な点が多い。本研究では、猿ヶ森地域の材木沢河床の泥炭層(約1,000年前)から得られた埋没木63点を対象に、その産出状況、形態的特徴の観察および、木材解剖学的樹種同定を行ない、埋没林の樹種組成とその生育環境を復元した。

樹種同定の結果、ヒバの出現数が42点と最も多く、アカマツが5点、イチイが3点であり、針葉樹が約8割を占める組成となった。広葉樹ではコナラ属コナラ節が5点出現し、ほかにハンノキ属ハンノキ節、カエデ属、トネリコ属が各2点、サワグルミとカツラが各1点出現し、渓畔林や湿地林の構成種が目立った。平面分布では、ヒバとアカマツは調査区の全域に出現し、イチイ、コナラ属は上流側に偏って出現する傾向が見られた。ヒバ埋没木の根系は、泥炭土壌上に水平にかつ多方向に広く張り、周辺個体と連結するような形態的特徴をもっていた。以上の結果から、猿ヶ森地域の低地には、ヒバが大きく優占し、アカマツ、コナラ属コナラ節などと湿地林の構成種が混交する森林が形成され、その生育環境は過湿で不安定であったことが明らかとなった。


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