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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-326

紀伊半島温帯針葉樹林における樹木群集動態に及ぼす地形の影響

*中森由美子(和歌山県林試),星野大介(森林総研・東北),鳥丸猛(ウメオ大),西村尚之(名産大)


わが国の暖温帯域の人為撹乱のない急峻な山地帯には、マツ科などを中心とした針葉樹の優占する温帯針葉樹林が、照葉樹林を構成する常緑広葉樹が混生した状態で成立している。特に、紀伊半島と四国東部の限られた地域の急傾斜地にはトガサワラ等の遺存性樹種が優占した温帯針葉樹林が分布している。この温帯針葉樹林における樹木群集の更新様式は地滑り等の自然撹乱に関係しており、尾根や谷などの地形要因に関連する撹乱体制が樹木個体群の空間分布や動態を決定する重要な現象である。そこで本研究は急傾斜地に成立した温帯針葉樹林における主要構成種の空間分布や成長動態に及ぼす地形要因の影響を明らかにすることを目的に行った。奈良県川上村にある天然記念物三之公トガサワラ原始林内に設置した1ha調査区で2003年と2008年に毎木調査(胸高直径≧5cm)を行った。調査区内を5m×5mの400メッシュに区切り、各メッシュの地形属性と主要構成種の空間分布との関係について解析した結果、幹密度の高いサカキやウラジロガシ等の常緑広葉樹は傾斜角の大きい場所に多く分布し、ツガやトガサワラ等の常緑針葉樹やアセビ、ソヨゴ、ネジキ等の中低木広葉樹は凹凸度の高い場所に多く分布する傾向があった。5年間の幹の死亡率は新規加入率より高かったため林分の幹密度は減少したが、全胸高断面積合計はやや増加した。幹の死亡要因は自然枯死、幹折・根返、倒木撹乱に大別でき、自然枯死に比べ地形影響による損傷が原因と考えられる死亡や倒木被害による死亡の割合が大きかった。さらに本報告では地形の不均一性とこれに対応する樹種の個体群動態や成長動態を考察し、温帯針葉樹林における樹木群集動態に及ぼす地形要因の影響について検討を行う。


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