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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB1-327

地形が規定する森林の構造―侵食作用が卓越する丹沢山地の例―

酒井暁子,藤巻玲路,北川涼(横国・環境情報),川崎昭如(国連大学)


丹沢山地はプレートの境界部に位置するため,日本の中でもとりわけ隆起速度が大きく,そのため激しい侵食作用を受け,起伏に富んだ地形が形成されている。森林の空間構造と地上バイオマスの分布およびそれらの規定要因を明らかにするために、中川水系西沢集水域(306ha;標高540-1290m)において、1)41地点で直径5cm以上の毎木調査、土壌厚・斜面傾斜等の測定、2)集水域の一部(57ha)で直径50cm以上の全ての大径木の調査を行い、統計処理とGISによって解析を行った。3)同水系東沢集水域の一部で2と同様の調査解析を行った。

1)樹木の胸高断面積(BA)合計は、ラプラシアンが小さい (尾根的)・土が厚い・傾斜が緩いほど大きく、この3変数でよく説明できた。尾根に近いほど傾斜が緩く土が厚い傾向にある。またトーナル風化土壌より火山灰性土壌でBA合計が高い。GISを用いて集水域全域の地形情報を読み取り,BAの予測式をあてはめて地図化した結果,尾根筋を中心に森林が発達している状況が把握できた。2)調査地には16種362本の大径木が出現した。ロジスティック重回帰とAICによってパラメーター推定と変数選択を行って分布確率モデルを作成し,GISを用いて地図化した。選択された変数は,ラプラシアン・標高,および斜面傾斜(全種・ブナ)である。大径木は,尾根筋に沿った極めて狭い範囲に分布が限定されていた。

本地域では地表の削剥作用が活発なために,これが森林の局所的な発達パターンの規定要因となっていることが明らかとなった。一般的には、尾根よりも谷に近いほうが水分・養分条件が良いために植生はより発達すると言われるが,本地域では逆に,尾根に近い方が地表が安定しているために森林がより発達していると言える。


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