ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB2-676
*細川真也(港空研),中村由行(港空研),西村大司(名古屋技調),長谷川雅弘(中部地整)
海草の栄養塩固定や炭素固定の寄与を明らかにするため,海草生長量の推定方法の開発が求められている.本研究では,我が国の沿岸域に優占するアマモに着目し,各葉齢のバイオマスと葉間期の情報のみを必要とした生長量推定方法を提案する.この方法は,現存量調査方法を基礎としており,高度な技術を必要としない.
メソコスム水槽に生育するアマモにおいて,この方法を用いて生長量を測定した.また,直接測定法によって得られた生長量と比較した.この結果,本推定方法ではアマモ生長量を高い精度で推定可能であった.また,既存の推定方法であるplastochrone法よりも高精度な結果を得られる事が示された.
三河湾の実海域に生育するアマモに対して,本推定方法を適用した.事前調査において,地上部バイオマスは若いシュートほど小さく,生長量の推定においてはシュート齢を考慮しなければならないことが示されたため,各シュート齢においてアマモ生長量を推定した.また,現存量変化と生長量との差から枯死量を推定した.この結果,アマモの生長量および枯死量の季節変動を定量的に示すことができ,三河湾におけるアマモ場の物質循環に対する役割を明らかにすることが可能となることを示した.
アマモ場の生長量の測定は,今までの環境調査ではほとんど行われることがなかった.本研究で示した海草生長量の推定方法は,高度な技術を要せずに高い精度での生長量推定を可能にすることから,実務レベルでのアマモ場生長量の測定を可能とした.これにより,沿岸域の物質循環におけるアマモ場の役割の解明が期待される.