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ESJ56 一般講演(ポスター発表) PB2-697

洞窟生態系における動物バイオマス,微生物バイオマス及びデトリタスの分布と相互関係

*新部一太郎,星川和夫(鳥取大院・生物環境)


一般に,洞窟や地下の生態系では地上の生態系に比べて有機物量が少ない。したがってその有機物に依存している洞窟の動物群集が貧弱になることは必然的である。ところが,近年の洞窟生物に関する研究からは,洞窟の動物群集は有機物量から想定されるよりもずっと小規模であることが示されている。

こうした事実は,洞窟動物が洞窟内に存在する有機物の全てを自由に利用できるわけではないということを示唆している。先行研究では,見かけ上の有機物量は十分にあっても,動物群集にとっての可用性が極めて低いことが制限要因ではないかと推測されているが,可用性に関連する因子については未解明である。そこで本研究では洞窟動物における有機物の可用性に関する基礎情報を得るため,洞内に存在する有機物の組成(微生物バイオマスとデトリタスの比率),及びその量と時空間的な分布について,5つの洞窟でそれぞれ微環境パッチごとに調査地点を設けて追跡調査した。

有機炭素の存在量は,洞窟ごとあるいは洞窟内の領域ごとに異なっていたが,洞口付近で顕著に多いことと,石灰洞では洞窟の形成年代が古いほど多いという傾向を除き,ほぼランダムなパターンを示した。これらの分布は少なくとも調査期間内では変化しなかった。有機物の組成に関しては,水分量とも関連していたが,基本的には地表から高頻度で有機物が供給される領域でデトリタスの比率が高い傾向にあった。

このように洞窟における有機物の組成と分布は偏在的であり,こうした要因が動物群集における有機物の可用性と関連している可能性は高い。動物群集側からの調査は継続中であるが,両者の関連についても予察的な報告をしたい。


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